程普字德謀、右北平土垠人也。初為州郡吏、有容貌計略、善於應對。從孫堅征伐、討黄巾於宛・鄧、破董卓於陽人、攻城野戰、身被創夷。
堅薨、復隨孫策在淮南、從攻廬江、拔之、還倶東渡。策到橫江・當利、破張英・于麋等、轉下秣陵・湖孰・句容・曲阿、普皆有功、增兵二千、騎五十匹。進破烏程・石木・波門・陵傳・餘亢、普功為多。策入會稽、以普為呉郡都尉、治錢唐。後徙丹楊都尉、居石城。復討宣城・涇・安呉・陵陽・春穀諸賊、皆破之。策嘗攻祖郎、大為所圍、普與一騎共蔽扞策、驅馬疾呼、以矛突賊、賊披、策因隨出。後拜盪寇中郎將、領零陵太守、從討劉勳於尋陽、進攻黄祖於沙羨、還鎮石城。
策薨、與張昭等共輔孫權、遂周旋三郡、平討不服。又從征江夏、還過豫章、別討樂安。樂安平定、代太史慈備海昬、與周瑜為左右督、破曹公於烏林、又進攻南郡、走曹仁。拜裨將軍、領江夏太守、治沙羨、食四縣。
孫権が統事した当初、具体的な軍事行動が説明されているのは周瑜ではなく程普です。又たこの時、南辺の廬陵方面に送られていた周瑜とは異なり、程普が経略した三郡は呉会とも呼ばれる後の孫呉の中枢で、こうした点からも、孫呉政権で張昭と対になる軍事の柱石は程普だと想定できます。
又た江夏征伐に従い、還途に豫章を過ぎた処で別れて楽安を討った。楽安を平定すると、太史慈に代って海昬(九江市永修)で備え、周瑜と左右督となって曹操を烏林に破り、又た進んで南郡を攻め、曹仁を走らせた。裨将軍を拝命し、江夏太守を兼領し、沙羨で治め、（付近の）四県を食邑とした。超駆け足です。孫策が歿してから南郡を接収するまでの八年間をたった79文字で収めてしまいました。周瑜との軋轢は周瑜伝にて、といった処でしょう。
先出諸將、普最年長、時人皆呼程公。性好施與、喜士大夫。周瑜卒、代領南郡太守。權分荊州與劉備、普復還領江夏、遷盪寇將軍、卒。權稱尊號、追論普功、封子咨為亭侯。
程普の死期は明記されていませんが、孫皎伝に 「代程普督夏口。黄蓋及兄瑜卒、又并其軍」 とあり、孫瑜の死が建安二十年（215）と明記されているので、程普の死は211～215年の間だとされます。しかしその一方で、孫権が称帝した時、太子となった孫登が荊州で現役の人材を歩隲に訊ねた処、諸葛瑾・陸遜・朱然・潘濬・裴玄・夏侯承・衞旌・李粛・周条・石幹らと並んで程普を挙げているという事実もあり、何らかの事情で役職を退いた後も、荊州で裏方として活動していたとも考えられます。
黄蓋字公覆、零陵泉陵人也。初為郡吏、察孝廉、辟公府。孫堅舉義兵、蓋從之。堅南破山賊、北走董卓、拜蓋別部司馬。堅薨、蓋隨策及權、擐甲周旋、蹈刃屠城。
諸山越不賓、有寇難之縣、輒用蓋為守長。石城縣吏、特難檢御、蓋乃署兩掾、分主諸曹。教曰：「令長不德、徒以武功為官、不以文吏為稱。今賊寇未平、有軍旅之務、一以文書委付兩掾、當檢攝諸曹、糾擿謬誤。兩掾所署、事入諾出、若有姦欺、終不加以鞭杖、宜各盡心、無為衆先。」初皆怖威、夙夜恭職；久之、吏以蓋不視文書、漸容人事。蓋亦嫌外懈怠、時有所省、各得兩掾不奉法數事。乃悉請諸掾吏、賜酒食、因出事詰問。兩掾辭屈、皆叩頭謝罪。蓋曰：「前已相敕、終不以鞭杖相加、非相欺也。」遂殺之。縣中震慄。後轉春穀長、尋陽令。凡守九縣、所在平定。遷丹楊都尉、抑彊扶弱、山越懷附。
「令長は不徳であり、徒らに武功で官となったもので、文吏としての称(ほまれ)は無い。今、賊寇は未だ平らがず、軍旅の務めがあり、一切の文書を両掾に委付し、諸曹を検摂させ、謬誤を糾擿させる。両掾の所轄での事入諾出(収支の認可)でもし姦欺があれば、終には鞭杖を加え（るだけでは済まさ）ないので、各々は心を尽し、人々に先んじ（て刑罰を受け）る事の無いようにせよ」 。
初め皆な威を怖れて夙夜に職に恭(つつし)んだが、久しくして吏は黄蓋が文書を視ていない事を知り、ようよう人事(私事)を容喙した。黄蓋も亦た懈怠を嫌疑し、時折り視察し、各々の両掾が法を奉じていない数々の事例を得た。かくして悉くの諸掾吏を請宴して酒食を賜い、そこで事実を出して詰問した。両掾は弁辞に屈し、皆な叩頭謝罪した。黄蓋 「前に已に、終には鞭杖を加えぬと敕えた。欺きはしない」。かくて殺した。県中は震慄とした。蓋姿貌嚴毅、善於養衆、毎所征討、士卒皆爭為先。建安中、隨周瑜拒曹公於赤壁、建策火攻、語在瑜傳[2]。拜武鋒中郎將。武陵蠻夷反亂、攻守城邑、乃以蓋領太守。時郡兵才五百人、自以不敵、因開城門、賊半入、乃撃之、斬首數百、餘皆奔走、盡歸邑落。誅討魁帥、附從者赦之。自春訖夏、寇亂盡平、諸幽邃巴・醴・由・誕邑侯君長、皆改操易節、奉禮請見、郡境遂清。後長沙益陽縣為山賊所攻、蓋又平討。加偏將軍、病卒于官。
蓋當官決斷、事無留滯、國人思之。及權踐阼、追論其功、賜子柄爵關内侯。
孫皎伝によれば、黄蓋の死は建安二十年（215）の孫瑜の死以前の事の様です。
韓當字義公、遼西令支人也。以便弓馬、有膂力、幸於孫堅、從征伐周旋、數犯危難、陷敵擒虜、為別部司馬[1]。及孫策東渡、從討三郡、遷先登校尉、授兵二千、騎五十匹。從征劉勳、破黄祖、還討鄱陽、領樂安長、山越畏服。後以中郎將與周瑜等拒破曹公、又與呂蒙襲取南郡、遷偏將軍、領永昌太守。宜都之役、與陸遜・朱然等共攻蜀軍於涿郷、大破之、徙威烈將軍、封都亭侯。曹真攻南郡、當保東南。在外為帥、厲將士同心固守、又敬望督司、奉遵法令、權善之。黄武二年、封石城侯、遷昭武將軍、領冠軍太守、後又加都督之號。將敢死及解煩兵萬人、討丹楊賊、破之。會病卒、子綜襲侯領兵。
其年、權征石陽、以綜有憂、使守武昌、而綜淫亂不軌。權雖以父故不問、綜内懷懼[2]、載父喪、將母家屬部曲男女數千人奔魏。魏以為將軍、封廣陽侯。數犯邊境、殺害人民、權常切齒。東興之役、綜為前鋒、軍敗身死、諸葛恪斬送其首、以白權廟。
蔣欽字公奕、九江壽春人也。孫策之襲袁術、欽隨從給事。及策東渡、拜別部司馬、授兵。與策周旋、平定三郡、又從定豫章。調授葛陽尉、歴三縣長、討平盜賊、遷西部都尉。會稽冶賊呂合・秦狼等為亂、欽將兵討撃、遂禽合・狼、五縣平定、徙討越中郎將、以經拘・昭陽為奉邑。賀齊討黟賊、欽督萬兵、與齊并力、黟賊平定。從征合肥、魏將張遼襲權於津北、欽力戰有功、遷盪寇將軍、領濡須督。後召還都、拜（津）右護軍、典領辭訟。
權嘗入其堂内、母疎帳縹被、妻妾布裙。權歎其在貴守約、即敕御府為母作錦被、改易帷帳、妻妾衣服悉皆錦繍。
初、欽屯宣城、嘗討豫章賊。蕪湖令徐盛收欽屯吏、表斬之、權以欽在遠不許、盛由是自嫌於欽。曹公出濡須、欽與呂蒙持諸軍節度。盛常畏欽因事害己、而欽毎稱其善。盛既服德、論者美焉。
蔣欽の美事としては他に、孫権に読書を勧められ、後に 「長じて益々進取するのは、呂蒙・蔣欽に及ぶ者はあるまい。富貴栄顕しても節を折って学問を好み、財を軽んじて義を貴び、行ないは規範となり、揃って国士となった。何と素晴らしいではないか！」 と歎じられたという逸話があります。残念な事に『江表伝』由来であり、しかも読書を勧められた時の呂蒙のリアクションが詳しく記されているのに、蔣欽については“ついで”としてしか扱われていません。
權討關羽、欽督水軍入沔、還、道病卒。權素服舉哀、以蕪湖民二百戸・田二百頃、給欽妻子。子壹封宣城侯、領兵拒劉備有功、還赴南郡、與魏交戰、臨陳卒。壹無子、弟休領兵、後有罪失業。
※ 春秋晋の大夫。悼公から人材を問われた時、仇讐の解狐を推し、次いで自分の子の祁午を薦め、時人から公正無比と讃えられた。又た後に欒盈が放逐された時、その一族の叔向の赦免を主張して実現したが、その事を叔向には告げず、叔向も返礼しなかった事で更に評判を高めた。
周泰字幼平、九江下蔡人也。與蔣欽隨孫策為左右、服事恭敬、數戰有功。策入會稽、署別部司馬、授兵。權愛其為人、請以自給。策討六縣山賊、權住宣城、使士自衞、不能千人、意尚忽略、不治圍落、而山賊數千人卒至。權始得上馬、而賊鋒刃已交於左右、或斫中馬鞍、衆莫能自定。惟泰奮激、投身衞權、膽氣倍人、左右由泰並能就戰。賊既解散、身被十二創、良久乃蘇。是日無泰、權幾危殆。策深德之、補春穀長。後從攻皖、及討江夏、還過豫章、復補宜春長、所在皆食其征賦。
これは何も周泰に対する特別措置ではなく、随所で出てくる孫呉の将帥の常道です。最も顕著なのが封侯措置で、大抵は任地の周辺の県邑が食禄とされ、多くの場合は異動と伴に封邑も更新されています。
從討黄祖有功。後與周瑜・程普拒曹公於赤壁、攻曹仁於南郡。荊州平定、將兵屯岑。曹公出濡須、泰復赴撃、曹公退、留督濡須、拜平虜將軍。時朱然・徐盛等皆在所部、並不伏也、權特為案行至濡須塢、因會諸將、大為酣樂。權自行酒到泰前、命泰解衣、權手自指其創痕、問以所起。泰輒記昔戰闘處以對、畢、使復服、歡讌極夜。其明日、遣使者授以御蓋。於是盛等乃伏。
孫呉でのキャリアだけでなく、年齢でも恐らくは黄蓋＞周泰＞徐盛かと思われますが、徐盛が黄蓋を畏れた一方で周泰を認めなったという事から、徐盛伝には匂わせるような記述はありませんが、徐盛が勢族の出だという事を示唆しています。ちなみに黄蓋は零陵の勢族だったようです。
孫権は自ら行酒(酌)して周泰の前に到ると、周泰に衣を解くよう命じ、孫権は手ずから自らその創痕を指し、その縁起を問うた。周泰はそのたび昔の戦闘の記憶を以て対(こた)え、畢えると復た着服させ、歓讌して夜を極めた。その明日、使者を遣って御蓋を授けた[1]。ここに徐盛らも承伏した。後權破關羽、欲進圖蜀、拜泰漢中太守・奮威將軍、封陵陽侯。黄武中卒。
子邵以騎都尉領兵。曹仁出濡須、戰有功、又從攻破曹休、進位裨將軍、黄龍二年卒。弟承領兵襲侯。
陳武字子烈、廬江松滋人。孫策在壽春、武往脩謁、時年十八、長七尺七寸、因從渡江、征討有功、拜別部司馬。策破劉勳、多得廬江人、料其精鋭、乃以武為督、所向無前。及權統事、轉督五校。仁厚好施、郷里遠方客多依託之。尤為權所親愛、數至其家。累有功勞、進位偏將軍。建安二十年、從撃合肥、奮命戰死。權哀之、自臨其葬。
※ 五営とも。京師を衛る長水・歩兵・射声・屯騎・越騎校尉の総称。ここでは近衛隊長の雅称。
子脩有武風、年十九、權召見奬厲、拜別部司馬、授兵五百人。時諸新兵多有逃叛、而脩撫循得意、不失一人。權奇之、拜為校尉。建安末、追録功臣後、封脩都亭侯、為解煩督。黄龍元年卒。
弟表、字文奧、武庶子也、少知名、與諸葛恪・顧譚・張休等並侍東宮、皆共親友。尚書曁豔亦與表善、後豔遇罪、時人咸自營護、信厚言薄、表獨不然、士以此重之。（〔從〕太子中庶子、拜翼正都尉。兄脩亡後、表母不肯事脩母、表謂其母曰：「兄不幸早亡、表統家事、當奉嫡母。母若能為表屈情、承順嫡母者、是至願也；若母不能、直當出別居耳。」表於大義公正如此。由是二母感寤雍穆。
表以父死敵場、求用為將、領兵五百人。表欲得戰士之力、傾意接待、士皆愛附、樂為用命。時有盜官物者、疑無難士施明。明素壯悍、收考極毒、惟死無辭、廷尉以聞。權以表能得健兒之心、詔以明付表、使自以意求其情實。表便破械沐浴、易其衣服、厚設酒食、歡以誘之。明乃首服、具列支黨。表以状聞。權奇之、欲全其名、特為赦明、誅戮其黨。遷表為無難右部督、封都亭侯、以繼舊爵。表皆陳讓、乞以傳脩子延、權不許。
嘉禾三年、諸葛恪領丹楊太守、討平山越、以表領新安都尉、與恪參勢。初、表所受賜復人得二百家、在會稽新安縣。表簡視其人、皆堪好兵、乃上疏陳讓、乞以還官、充足精鋭。詔曰：「先將軍有功於國、國家以此報之、卿何得辭焉？」表乃稱曰：「今除國賊、報父之仇、以人為本。空枉此勁鋭以為僮僕、非表志也。」皆輒料取以充部伍。所在以聞、權甚嘉之。下郡縣、料正戸羸民以補其處。表在官三年、廣開降納、得兵萬餘人。事捷當出、會鄱陽民呉遽等為亂、攻沒城郭、屬縣搖動、表便越界赴討、遽以破敗、遂降。陸遜拜表偏將軍、進封都郷侯、北屯章阬。年三十四卒。家財盡於養士、死之日、妻子露立、太子登為起屋宅。子敖年十七、拜別部司馬、授兵四百人。敖卒、脩子延復為司馬代敖。延弟永、將軍、封侯。始施明感表、自變行為善、遂成健將、致位將軍。
董襲字元代、會稽餘姚人、長八尺、武力過人。孫策入郡、襲迎於高遷亭、策見而偉之、到署門下賊曹。時山陰宿賊黄龍羅・周勃聚黨數千人、策自出討、襲身斬羅・勃首、還拜別部司馬、授兵數千、遷揚武都尉。從策攻皖、又討劉勳於尋陽、伐黄祖於江夏。
策薨、權年少、初統事、太妃憂之、引見張昭及襲等、問江東可保安否、襲對曰：「江東地勢、有山川之固、而討逆明府、恩德在民。討虜承基、大小用命、張昭秉衆事、襲等為爪牙、此地利人和之時也、萬無所憂。」衆皆壯其言。
鄱陽賊彭虎等衆數萬人、襲與淩統・歩隲・蔣欽各別分討。襲所向輒破、虎等望見旌旗、便散走、旬日盡平、拜威越校尉、遷偏將軍。
建安十三年、權討黄祖。祖橫兩蒙衝挾守沔口、以栟閭大紲繋石為矴、上有千人、以弩交射、飛矢雨下、軍不得前。襲與淩統倶為前部、各將敢死百人、人被兩鎧、乘大舸船、突入蒙衝裏。襲身以刀斷兩紲、蒙衝乃橫流、大兵遂進。祖便開門走、兵追斬之。明日大會、權舉觴屬襲曰：「今日之會、斷紲之功也。」
とか云いつつ、この時の論功で行賞が明記されているのは呂蒙と淩統くらいのものです。『呉書』の記載漏れなのか、正式な行賞を控えている間に曹操と決裂してしまって有耶無耶になってしまったのかは定かではありません。
曹公出濡須、襲從權赴之、使襲督五樓船住濡須口。夜卒暴風、五樓船傾覆、左右散走舸、乞使襲出。襲怒曰：「受將軍任、在此備賊、何等委去也、敢復言此者斬！」於是莫敢干。其夜船敗、襲死。權改服臨殯、供給甚厚。